Wi-Fi が遅いのは隣の部屋のせいかもしれない
自宅の Wi-Fi が突然遅くなる。動画が途切れる。ビデオ会議が固まる。原因はルーターの故障でも ISP の障害でもなく、隣の部屋の Wi-Fi と「チャンネル」が被っているだけかもしれません。
Wi-Fi は電波を使って通信しますが、使える電波の帯域は有限です。この有限の帯域を「チャンネル」に分割して複数のネットワークが共存する仕組みが、Wi-Fi チャンネルです。そして、この仕組みが集合住宅での Wi-Fi 干渉の元凶になっています。
2.4 GHz 帯の「3 チャンネル問題」
2.4 GHz 帯の Wi-Fi (802.11b/g/n) には 1〜13 のチャンネルがありますが、互いに干渉しない (重ならない) チャンネルの組み合わせは 1、6、11 の 3 つだけです。
各チャンネルは 22 MHz の帯域幅を占有しますが、チャンネル間の間隔は 5 MHz しかありません。つまり、チャンネル 1 とチャンネル 2 は帯域が大きく重なっています。完全に重ならないためには 5 チャンネル分 (25 MHz) の間隔が必要で、それを満たすのが 1、6、11 の組み合わせです。
集合住宅で数十の Wi-Fi ネットワークが 3 つのチャンネルを奪い合う状況を想像してください。これが 2.4 GHz 帯の Wi-Fi が遅くなる根本原因です。カフェや空港などの公衆 Wi-Fi では、さらに多くのネットワークが密集するため、干渉はより深刻になります。
5 GHz 帯 - チャンネルは豊富だが壁に弱い
5 GHz 帯 (802.11a/n/ac/ax) は、2.4 GHz 帯よりもはるかに多くのチャンネルを提供します。日本では 19 チャンネル (W52/W53/W56) が利用可能で、干渉の問題は大幅に緩和されます。
ただし、5 GHz の電波は 2.4 GHz よりも壁や床を透過しにくいという物理的な特性があります。隣の部屋との干渉は少ないですが、自宅内でもルーターから離れると速度が低下しやすくなります。
- 2.4 GHz: 遠くまで届くが、チャンネルが少なく干渉しやすい
- 5 GHz: チャンネルが豊富で高速だが、壁に弱い
- 6 GHz (Wi-Fi 6E/7): さらに広い帯域を提供。対応機器はまだ少ない
チャンネルの確認と最適化
自分の Wi-Fi がどのチャンネルを使っているか、周囲にどれだけのネットワークが存在するかは、以下のツールで確認できます。
- macOS: Option キーを押しながら Wi-Fi アイコンをクリック → 「ワイヤレス診断を開く」→「スキャン」
- Windows: コマンドプロンプトで
netsh wlan show all - Android: WiFi Analyzer などのアプリ
- iOS: Apple は Wi-Fi スキャンアプリを制限しているため、ルーターの管理画面で確認
周囲のネットワークが集中しているチャンネルを避け、空いているチャンネルに手動で設定することで、干渉を軽減できます。2.4 GHz 帯では 1、6、11 のいずれかから最も空いているものを選んでください。チャンネル設定と合わせて、Wi-Fi の暗号化方式が安全かどうかも確認しておくと安心です。
電子レンジと Bluetooth - 2.4 GHz の敵
2.4 GHz 帯は Wi-Fi だけのものではありません。電子レンジ (2.45 GHz)、Bluetooth (2.4 GHz)、コードレス電話、ベビーモニターなど、多くの機器がこの帯域を共有しています。
電子レンジを使うと Wi-Fi が途切れるのは、電子レンジが 2.45 GHz の強力な電磁波を発生させ、Wi-Fi の信号を妨害するためです。電子レンジのシールドは完全ではなく、微量の電磁波が漏洩します。
まとめ
Wi-Fi の速度問題の多くは、チャンネル干渉に起因します。2.4 GHz 帯の「3 チャンネル問題」を理解し、5 GHz 帯への移行やチャンネルの手動最適化を行うことで、劇的に改善できる場合があります。IP 確認さんで回線速度に問題を感じたら、まず Wi-Fi チャンネルの干渉を疑ってみてください。Wi-Fi 接続後にルーターから割り当てられるIP アドレスの仕組みも理解しておくと、ネットワークのトラブルシューティングに役立ちます。
Wi-Fi の技術的な仕組みを体系的に学びたい方には、無線 LAN の入門書が参考になります。