「クラウド」は空の上にはない

「写真をクラウドに保存する」「クラウドで作業する」- 日常的に使う「クラウド」という言葉。ふわふわした雲のアイコンで表現されるため、データが空のどこかに浮かんでいるようなイメージを持つ人もいるかもしれません。

しかし現実は、クラウドとは「世界中に設置された巨大なデータセンターにあるコンピュータ」のことです。IT 業界では「There is no cloud. It's just someone else's computer. (クラウドなんてない。他人のコンピュータだ)」というジョークが有名です。

データセンターの実態

あなたの iPhone の写真、Gmail のメール、Netflix の映画 - これらはすべて、世界のどこかにある巨大な建物の中のサーバーに保存されています。

  • Google: 世界 30 か所以上にデータセンターを運営。1 つのデータセンターにサーバーが数十万台
  • Amazon (AWS): 世界 30 以上のリージョンにデータセンター群を展開
  • Microsoft (Azure): 60 以上のリージョンで運営

データセンターは、サッカー場数個分の広さの建物に、何万台ものサーバーがラックに整然と並んでいます。24 時間 365 日稼働し、大量の電力と冷却設備を必要とします。

なぜ「クラウド」と呼ぶのか

ネットワーク図を描くとき、インターネットを「雲」の形で表現する慣習が 1990 年代からありました。自社のネットワークは詳細に描くが、インターネットの中身は複雑すぎるので雲でぼかす。この「雲の向こう側にあるコンピュータ」が「クラウドコンピューティング」の語源です。

つまり「クラウド」は技術用語というよりマーケティング用語に近く、「インターネット経由で使えるコンピュータ資源」を親しみやすく表現したものです。

クラウドに保存したデータはどこにある?

「私のデータはどの国にあるの?」- これは意外と重要な問題です。

  • iCloud (Apple): 日本のユーザーのデータは、主にアメリカと中国 (中国本土のユーザーのみ) のデータセンターに保存される
  • Google Drive: データは複数のデータセンターに分散して保存される。どの国にあるかはユーザーには分からない
  • AWS: リージョンを選択できるため、「東京リージョン」を選べば日本国内のデータセンターに保存される

EU の GDPR では、EU 市民のデータを EU 域外に転送する際に厳格なルールが適用されます。データの物理的な所在地は、法律上も重要な意味を持つのです。クラウドに預けるデータの安全性を高めるには、デバイスの暗号化も合わせて有効にしておくと、端末の紛失時にもデータを保護できます。

クラウドが「落ちる」とどうなるか

クラウドサービスに障害が起きると、影響は広範囲に及びます。AWS の S3 障害 (2017 年) では、Netflix、Slack、Trello など多数のサービスが同時にダウンしました。

「クラウドは安全」というイメージがありますが、結局は物理的なコンピュータです。停電、冷却装置の故障、ソフトウェアのバグ、人為的ミス - 障害の原因は自分のパソコンと変わりません。違いは、障害が起きたときに影響を受けるユーザーの数が桁違いに多いことです。

まとめ

クラウドは空の上ではなく、世界中のデータセンターにある物理的なコンピュータです。「他人のコンピュータ」にデータを預けているという意識を持ち、クラウドストレージのセキュリティ対策を確認したうえで、重要なデータはローカルにもバックアップを取っておくことをおすすめします。IP 確認さんにアクセスするとき、そのリクエストもクラウド上のサーバーが処理しています。

クラウドコンピューティングの仕組みを体系的に学びたい方には、クラウド技術の入門書が参考になります。

この記事の関連用語

IP アドレス クラウドのサーバーにも IP アドレスが割り当てられている。 DNS クラウドサービスへのアクセスも DNS でサーバーの IP アドレスを解決するところから始まる。 暗号化 クラウドに保存されるデータは暗号化されるが、暗号化キーの管理が重要。