ダークモードブームの裏側
スマートフォンやパソコンの「ダークモード」は、2018 年から 2019 年にかけて主要な OS が相次いで正式対応したことで一気に広まりました。iOS、Android、Windows、macOS、そして多くの Web サイトやアプリがダークモードに対応しています。「目に優しい」「バッテリーが長持ちする」「かっこいい」- さまざまな理由で支持されていますが、これらは本当でしょうか。
ダークモードは本当に目に優しいのか
結論から言うと、科学的な証拠は「場合による」です。
暗い環境では有利
夜間や暗い部屋でスマートフォンを使う場合、白い背景は眩しく感じます。ダークモードは画面全体の輝度を下げるため、暗い環境では目の疲れを軽減する効果があります。
明るい環境では不利な場合も
明るい環境では、「白背景に黒文字」(ライトモード) の方が細かい文字を読み取りやすくなります。理由は瞳孔の動きです。明るい場所では瞳孔が小さく絞られ、ピントの合う奥行きの範囲が広がるため、文字の輪郭がはっきり見えます。逆に暗い背景を見ているときは瞳孔が開き、明るい文字がわずかにぼやけて見えます。
また、暗い背景に明るい文字を長時間読むと、「ハレーション効果」(明るい文字が暗い背景ににじんで見える現象) が起きやすく、乱視の人は特に読みにくく感じることがあります。
ブルーライトとの関係
「ダークモードはブルーライトを減らす」と言われることがありますが、これは部分的にしか正しくありません。ダークモードは画面全体の光量を減らすため、結果的にブルーライトの総量も減ります。しかし、ブルーライトを選択的にカットしているわけではありません。ブルーライトを減らしたいなら、OS のナイトシフト機能 (色温度を暖色に変える) の方が効果的です。ブラウザ側でのセキュリティ対策に興味がある方は、ブラウザ分離の仕組みも読んでみてください。
バッテリーへの効果 - 画面の種類で全然違う
ダークモードがバッテリーを節約するかどうかは、画面の種類によって大きく異なります。
- 有機 EL (OLED/AMOLED): 黒いピクセルは完全にオフになるため、ダークモードでバッテリーを節約できる。節約量は画面が発する光の量に比例するので、最大輝度に近い状態では差が大きく、輝度を絞って使っていると差は小さくなる
- 液晶 (LCD/IPS): バックライトが常に点灯しているため、画面が黒でもバッテリー消費はほぼ変わらない
2020 年代のスマートフォンは有機 EL の採用が主流のため、ダークモードのバッテリー節約効果を体感できる端末は多いです。ただし、液晶を採用した端末や多くのノートパソコンでは、効果は限定的です。スマートフォンのプライバシー設定全般についてはモバイルプライバシーの解説も参考にしてください。
ダークモードの歴史 - 実は「元に戻った」だけ
コンピュータの画面は、もともとダークモードでした。1970〜80 年代のコンピュータ端末は、黒い背景に緑やオレンジの文字が表示されるのが標準でした。映画「マトリックス」で有名な緑の文字が流れる画面は、この時代の端末をモチーフにしています。
1984 年に Apple が Macintosh を発売し、「白い背景に黒い文字」という紙のメタファーを導入しました。これが「ライトモード」の始まりです。以来 30 年以上、白い背景が標準でしたが、2018 年頃からダークモードが復活しました。つまり、ダークモードは「新しいトレンド」ではなく「原点回帰」なのです。
Web サイトのダークモード対応
Web サイトがダークモードに対応するには、CSS の prefers-color-scheme メディアクエリを使います。ブラウザが OS のダークモード設定を検出し、自動的にスタイルを切り替えます。ちなみに、このダークモード設定もブラウザフィンガープリントの一要素として利用される可能性があります。
IP 確認さんもダークモードに対応しています。OS の設定を変更すると、自動的に配色が切り替わります。
まとめ
ダークモードは万能ではありません。暗い環境では目の負担を軽減し、有機 EL 画面ではバッテリーを節約できますが、明るい環境での読みやすさはライトモードに劣ります。「どちらが正解」ではなく、環境に応じて使い分けるのがベストです。
この記事の関連用語
よくある質問
ダークモードは目に優しいですか?
暗い環境では目の負担を軽減します。一方、明るい環境では瞳孔が絞られてピントの合う範囲が広がるため、白背景に黒文字の方が細かい文字を読み取りやすくなります。環境に応じた使い分けが最適です。
ダークモードでバッテリーは長持ちしますか?
有機 EL (OLED) 画面では黒いピクセルが完全にオフになるため節約効果があり、最大輝度に近い状態ほど差が大きくなります。液晶 (LCD) 画面ではバックライトが常時点灯のため効果はほぼありません。
ダークモードはブルーライトを減らしますか?
画面全体の光量が減るため結果的にブルーライトの総量も減りますが、選択的にカットしているわけではありません。ブルーライト対策にはナイトシフト機能の方が効果的です。