シークレットモードは「秘密」ではない
Chrome の「シークレットモード」、Safari の「プライベートブラウズ」、Firefox の「プライベートウィンドウ」。名前からして、何をしても誰にもバレないような印象を受けます。しかし、シークレットモードが守ってくれる範囲は、多くの人が思っているよりもずっと狭いのです。
シークレットモードが「する」こと
シークレットモードが実際に行うのは、以下の 3 つだけです。
- 閲覧履歴を保存しない: シークレットウィンドウを閉じると、訪問したページの履歴が消える
- Cookie を保存しない: ウィンドウを閉じると Cookie が削除される。次回アクセス時にログイン状態が維持されない
- フォームの入力データを保存しない: 検索履歴やフォームの自動補完データが残らない
つまり、シークレットモードは「同じデバイスを使う他の人」に閲覧履歴を見られないようにする機能です。家族共用の PC でサプライズのプレゼントを検索するときには便利です。
シークレットモードが「しない」こと
ここが重要です。シークレットモードは以下のことを防ぎません。
- ISP はあなたの通信先を見ている: シークレットモードでも、ISP (インターネットプロバイダ) はあなたがどのサイトにアクセスしたかを記録できる。ISP のデータ収集はブラウザの設定では防げない
- 会社や学校のネットワーク管理者には見える: 職場や学校のネットワークを使っている場合、管理者はあなたの通信先を監視できる
- Web サイトはあなたの IP アドレスを知っている: IP 確認さんにシークレットモードでアクセスしても、通常モードと同じ IP アドレスが表示される
- ブラウザフィンガープリントは機能する: 画面解像度、フォント、ブラウザの設定などから、シークレットモードでもユーザーを識別できる
- ダウンロードしたファイルは残る: シークレットモードでダウンロードしたファイルは、通常どおりダウンロードフォルダに保存される
- ブックマークは残る: シークレットモードで追加したブックマークは削除されない
Google の 50 億ドル訴訟
2020 年 6 月、Google はシークレットモードに関する集団訴訟を起こされました。原告は「シークレットモードでもユーザーの閲覧データを収集していた」と主張し、2016 年以降の利用者への賠償として少なくとも 50 億ドルを求めました。
両者は 2023 年末に和解で基本合意し、2024 年 4 月にその条件が明らかになりました。注意したいのは、この和解に金銭の支払いが含まれていないことです。和解基金も請求手続きもなく、Google に課されたのは 2016 年以降に集めたシークレットモード関連の記録を数十億件規模で削除または匿名化することと、シークレットモード中でも Google 側にデータが渡り得る点を利用者に分かりやすく伝えるよう画面の説明を見直すことでした。金額の大きさが話題になった訴訟ですが、決着したのは「お金」ではなく「データの扱いと説明の仕方」だったわけです。
本当にプライバシーを守りたいなら
シークレットモードだけでは不十分です。本当にオンラインプライバシーを守りたい場合は、以下を組み合わせてください。
- VPN: ISP やネットワーク管理者から通信先を隠す
- DNS over HTTPS: DNS クエリを暗号化し、アクセス先のドメイン名を保護する
- 広告トラッキング対策: サードパーティ Cookie やトラッカーをブロックする
- Tor ブラウザ: 匿名化に特化したブラウザ。通信を多段中継で暗号化し、IP アドレスを秘匿する
まとめ
シークレットモードは「同じデバイスを使う家族に履歴を見られない」ための機能であり、インターネット上での匿名性を提供するものではありません。ISP、ネットワーク管理者、Web サイトは、シークレットモードでもあなたの活動を把握できます。IP 確認さんでシークレットモードと通常モードの両方で IP アドレスを確認してみてください。同じ IP アドレスが表示されるはずです。
この記事の関連用語
よくある質問
シークレットモードを使えば誰にもバレませんか?
いいえ。シークレットモードは同じデバイスを使う他の人に閲覧履歴を見られないようにする機能です。ISP、ネットワーク管理者、Web サイトはシークレットモードでもあなたの活動を把握できます。
シークレットモードで IP アドレスは隠せますか?
いいえ。IP 確認さんにシークレットモードでアクセスしても、通常モードと同じ IP アドレスが表示されます。IP アドレスを隠すには VPN が必要です。
Google の 50 億ドル訴訟とは何ですか?
2020 年 6 月に起こされた集団訴訟で、Google がシークレットモードでもユーザーの閲覧データを収集していたと主張され、少なくとも 50 億ドルの賠償が請求されました。2023 年末に和解で基本合意し、2024 年 4 月に条件が公開されましたが、和解に金銭の支払いは含まれていません。内容は、集めたシークレットモード関連データの削除・匿名化と、画面の説明の見直しです。