シークレットモードは「秘密」ではない
Chrome の「シークレットモード」、Safari の「プライベートブラウズ」、Firefox の「プライベートウィンドウ」。名前からして、何をしても誰にもバレないような印象を受けます。しかし、シークレットモードが守ってくれる範囲は、多くの人が思っているよりもずっと狭いのです。
シークレットモードが「する」こと
シークレットモードが実際に行うのは、以下の 3 つだけです。
- 閲覧履歴を保存しない: シークレットウィンドウを閉じると、訪問したページの履歴が消える
- Cookie を保存しない: ウィンドウを閉じると Cookie が削除される。次回アクセス時にログイン状態が維持されない
- フォームの入力データを保存しない: 検索履歴やフォームの自動補完データが残らない
つまり、シークレットモードは「同じデバイスを使う他の人」に閲覧履歴を見られないようにする機能です。家族共用の PC でサプライズのプレゼントを検索するときには便利です。
シークレットモードが「しない」こと
ここが重要です。シークレットモードは以下のことを防ぎません。
- ISP はあなたの通信先を見ている: シークレットモードでも、ISP (インターネットプロバイダ) はあなたがどのサイトにアクセスしたかを記録できる。ISP のデータ収集はブラウザの設定では防げない
- 会社や学校のネットワーク管理者には見える: 職場や学校のネットワークを使っている場合、管理者はあなたの通信先を監視できる
- Web サイトはあなたの IP アドレスを知っている: IP 確認さんにシークレットモードでアクセスしても、通常モードと同じ IP アドレスが表示される
- ブラウザフィンガープリントは機能する: 画面解像度、フォント、ブラウザの設定などから、シークレットモードでもユーザーを識別できる
- ダウンロードしたファイルは残る: シークレットモードでダウンロードしたファイルは、通常どおりダウンロードフォルダに保存される
- ブックマークは残る: シークレットモードで追加したブックマークは削除されない
Google の 50 億ドル訴訟
2020 年、Google はシークレットモードに関する集団訴訟を起こされました。原告は「シークレットモードでもユーザーの閲覧データを収集していた」と主張。2024 年、Google は推定 50 億ドル規模の和解に合意しました。
この訴訟をきっかけに、Chrome のシークレットモードの説明文が改訂されました。現在は「シークレットモードでは、他のユーザーがこのデバイスであなたのアクティビティを見ることはできません。ただし、ダウンロードしたファイル、ブックマーク、リーディングリストのアイテムは保存されます」と、より正確な説明が表示されています。
本当にプライバシーを守りたいなら
シークレットモードだけでは不十分です。本当にオンラインプライバシーを守りたい場合は、以下を組み合わせてください。
- VPN: ISP やネットワーク管理者から通信先を隠す
- DNS over HTTPS: DNS クエリを暗号化し、アクセス先のドメイン名を保護する
- 広告トラッキング対策: サードパーティ Cookie やトラッカーをブロックする
- Tor ブラウザ: 最も強力な匿名化手段。通信を多段階で暗号化し、IP アドレスを秘匿する
まとめ
シークレットモードは「同じデバイスを使う家族に履歴を見られない」ための機能であり、インターネット上での匿名性を提供するものではありません。ISP、ネットワーク管理者、Web サイトは、シークレットモードでもあなたの活動を把握できます。IP 確認さんでシークレットモードと通常モードの両方で IP アドレスを確認してみてください。同じ IP アドレスが表示されるはずです。
ブラウザのプライバシー機能の実態を知りたい方には、インターネットプライバシーの入門書が参考になります。